メリーゴー

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 「眠そうだから切るよ」  『えっ、あ、眠くなんか』  「嘘を言う子は嫌いだよ」  『……わかった』  何かをごちゃごちゃと  言っているようだったがさっさと  電源ボタンを押して、そのまま  携帯電話としての機能も停止させる。  ああ、このまま  逆に折ってしまえればどんなに良いか  と嘆息する。  そうすれば、ここの部屋を綺麗にして  家賃の期限までに死んでしまえば  良いんだ。  面倒くさい明日を  見なくて済む方法なんて  私には死ぬこと以外考えられない。  「駄目人間か」  人間と呼んで良いのだろうか、私を。  気力のない、わけではないんだろう。  実のところは、そういうことでも  ないのだと思う。  ただ生きることに楽しみを  感じ取れなくて、ただ生きている  感じだ。  死ねば良いのにと、淡々と呟く。  自殺は悪だと知り合いは言っていた。  ただの物体になることを、悪なのだと。  では私は悪なんだろう。  望むことも悪なんだろう。  悪でもなんでも良いから  取り合えず此処から泡になり消えて  ゆければと栓ないことを  思いながら煙草に火をつけた。  好きな人が居る。  好きな人は同性だ。  好きな人は私を好きにならない。  その人から返信がこない。  少しだけもやもやするが、それだけだ。  返信がこないならば待たない。  どうせ最初から知っていた。  叶わないから好きになったのだしと  これは強がりかもしれない。  
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