メリーゴー

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 携帯を見つめる。  電源の入っていないこの機械は  機能しなければ無能なのだ。  だが、ボタン一つで色々なところへ  繋がってゆけるこの機械は唯一の  私の世界でもあった。  だから、嫌いだった。  だから、必要だった。  私は人間の真似をしてこれを  駆使しているだけに違いない。  スウェットに血がついている。  皮膚が所々硬くなってゆくのを  眺めているだけの私は悪だろうか。  テーピングを巻き  それでも半袖を着続ける私は愚か  だろうか、人間の目に、  どう映っているのだろう。  わからない。  恋愛を、したことがないだろうと  よく言われる。  段々と、そうかもしれないと思考が  シフトしていったが、私は思いだす。  神様は、私を三回助けてくれたのだ。  恋に壊れゆく私を、三回。  私はソレに甘え、甘えすぎて結局  壊れた人間失格だった。  いや、違うか。  人格が破綻していたのは、元々  かもしれない。  よくわからない  けれど私は三回、  もう神様に助けられているのだ。  だからもう無理だと思った。  私は脆い。私は高い塀の中、  篭城している愚か者だ。  誰も入ってきませんように。  誰も許すことのないように。  通話相手のことを、気遣えない。  自分の利益だけでモノを言う私。  そんな私に好きな人が居たとしても、  望みはないだろう。  むしろ嫌われて振られてしまえばいい  と自分でそう思っていて。  頭の中で彼女を侵すことさえ躊躇われる  純愛を、中心が私ならば三流も  良いところだと。  
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