穢れたロマンチスト

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 そんなこと社会に出れば難しく、  年々潔癖になっていくような  自分の性癖に苛つきながら煙草をまた  探し始めるが、そうだ、なかったんだ。  動きたくないのにと、  左腕は真っ赤になっているのを眺めて  笑う。  力ある、笑いだった。  意思のある笑いだ。  なんで赤いんだろう。青ければ、  綺麗なのに。  そんな、戯言を。  「タッパに入れて固めるなんて、  血液を蹂躙してゆく日々は、楽しくも  嬉しくも愉快でも快楽でもないのよ。  あはは、あははは」  綺麗な詩が好きで、  綺麗な声が好きだなぁ、と  ヘッドセットから流れてくる音楽に  瞼を閉じた。  泣けない私はこうすることで、  ほっとするのだ。誰かがネットで  血を流すのは泣く代わりだと  言っていた。それが本当なら、  私はとても泣いたんだろう。  私でも、泣けるのだ。  人でなしの私でも。  人でなしは  生きていくことを放棄したがる。  他の人でなしのことは知らないが、  けれど私はそうだった。  生きることをやめたくて仕方無いが  死ぬことを進んでしたくもない。  痛いのは嫌い、なんて  この状態で言っても説得力は  ないのかもしれない。  けれどこれより痛いのだろうものが  死なのだ。  痛いのは嫌いだ。  何よりも、  自分以外のものから受ける痛みは  嫌いだ。  死はどこから来るのだろう。  けれど生きている以上死は絶対なのだ。  私は、生きているのだろうか?  「くらくら、ふらふら。  楽しい、楽しい――」  
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