6102人が本棚に入れています
本棚に追加
/911ページ
オーディションの日から3日。
編集部からはまだ、何の連絡もない。
本物のカノンを見て「モデルになりたい!」なんて思って偉(えら)そうなことを言っちゃったけど、冷静になってみればあの会場には美少女ばっかり集まっていたわけで。
(あたしが選ばれるわけないよね~)
だからあんまりドキドキもしてなくて、退屈だけどいつもの日常がやっと戻ってきたって感じ。
やっぱりあたしには、平凡な学生生活がお似合いなのだ。
(別にオーディションに合格しなくても、生のカノンに会うって目的は果たしたしね)
大好きなカノンをあんな近くで見られたうえに、目まで合っちゃって、おまけに笑いかけてもらっちゃったし!
「……なにひとりで笑ってるの~?」
「えへへ、ちょっとね」
「最近ユウ、やけにご機嫌だよねー。なんかいいことあったとか?」
屋上の片隅に座り込んだ彩が、イタズラをするような笑顔を浮かべて首をかしげる。
「うーん、そんな感じ?」
「まさか佐久間先輩とラブに!?」
「それもいいけど、今回はちょっと違うって」
「じゃあ何よぅ」
ふてくされた彩が、ぷーと頬を膨(ふく)らませる。
(彩になら、教えてもいいよね)
「実はね、あたし──」
みんなに内緒(ないしょ)でオーディションを受けていたこと、生のカノンに会ったり、プロのカメラマンに撮影してもらったこと、でもみんなすっごくかわいくて、あたしなんかじゃ全然話にならなかったこと。
短い間に起きたたくさんの出来事を話すと、彩は興奮したようにがばっと抱きついてきた。
「まじすごいじゃん、ユウ!」
「でもまだ何の連絡もないから、間違いなく不合格だよ。オーディションを受けるだけなら、誰でもできるし」
「でも最終審査まで残っただけでもすごいってゆーか、応募しようって思ったのがえらいよ、うん!」
「そうかなぁ?」
「そうそう! だからもっと自信持ちなって!」
「ムリムリ! それよりあたし、彩なら合格間違いなしだと思うんだけど」
「ウチは無理! ってゆーか、モデルとかありえないし!」
「そうなの?」
こんなにかわいくて明るい彩なら、きっとみんなの憧れになれると思うのに。
最初のコメントを投稿しよう!