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だけどこれが彩なら、そんな気持ちにはならないんじゃないかって、あたしは思うのだ。
「……きっとカノンもそうだよね」
枕元のクマを抱きしめて、ゴロンと寝返りを打つ。
壁際に貼られた1枚のポスター。
大きなリボンをつけたモデルが、ポーズを決めて微笑(ほほえ)んでる。
大竹夏音(おおたけ かのん)。
あたしが読んでるファッション雑誌「プチメロン」で、超人気のファッションモデル。
おしゃれでかわいくって、あたしが憧(あこが)れてる女の子。
どうしても本物のカノンに会いたくて、実はオーディションにまで応募してたんだけど……。
(そーいえばあのオーディションも、連絡ないなぁ。やっぱりあたしなんかじゃダメだったってことかぁ)
「プチメロン」は年に1回、新しいモデルを見つけるためにオーディションを開催する。
その最終審査には憧れのカノンも来るって聞いて、会いたい一心で応募したのが1か月前のこと。
さすがにこれだけ反応がないってことは、オーディションには不合格だったってことだろう。
モデルになれるかどうかはともかくとして、カノンに会うチャンスがなくなったっていうのはちょっと悔(くや)しい。
「会いたかったな~、本物のカノンに」
カノンはあたしより2コ年上だったから、佐久間先輩と同い年のはず。
だけどカノンのほうがあたしよりずっとずっとかわいくて、スタイルもよくて……。
「カノンに好きになってもらえたら、佐久間先輩だって嬉(うれ)しいよね~」
こんなにかわいい女の子に、好きって言われたら必ずOKすると思う。
「それに引き換えあたしは……」
するとノックもなしにドアが開いた。
「優奈、これ」
「も~、お母さんったら!」
あたしも中学生になったんだから、ノックぐらいしてよね! と言おうと思ったけど、渡された封筒の差出人を見たらそれどころじゃなくなってしまった。
「モデルオーディションの審査結果だ!」
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