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緊張しながら封を開けると──
「うそ!? ちょー嬉しい!! 書類審査合格──最終審査のご案内だって!!」
「あら、よかったじゃない。大騒(さわ)ぎして応募した甲斐(かい)があって」
最終審査に進んだってことは、審査員であるカノンに会えるってこと。
(……でも、オーディションの最終審査って、どんなふうなんだろ?)
あたしはカノンに会いたくて応募したけど、他の子はもちろんモデルを目指してて、当然かわいい子ばっかりで……。
そこに自分が並ぶところを想像したら、急に不安になってきた。
「あたしなんかがオーディションに参加なんて、やっぱりおかしいかな……?」
「行くだけ行ってみたらいいじゃない。せっかく最終審査まで残してもらったんだから」
「そうだよね、こんなチャンス滅多にないんだし……」
キレイな子たちに混じって、モデルの審査を受けるのは恥ずかしいけど、生のカノンに会えるなんて、これが最初で最後のチャンスかもしれない。
「……うん、行ってみる! 最終審査!」
どうせ行くならベストを尽(つ)くさないとね! ってことで、お母さんが出ていった部屋で、鏡の前に立ってポーズを決めてみる。
ポスターの中のカノンと、同じポーズ。
だけどあたしがやっても、なんだか様(さま)になってない。
(同じようにしてるのに、何が違うんだろ……)
「あ~あ」
ため息をついて鏡をのぞきこむ。
小麦色に焼けた肌と、どうしても好きになれない自分の顔。
お化粧なんか、もちろんしたことはない。
(魔法使いがいたらいいのに)
みすぼらしいシンデレラをお姫様にしてくれた魔法使いが、あたしをカノンや彩みたいにキレイな女の子にしてくれたら。
──そうしたら佐久間先輩にもあたしのこと、気づいてもらえるかもしれない。
「でも魔法使いなんて、いないもんね」
あたしだって、もう子供じゃないからわかってる。
肝心なところはまだまだ子供なのに、そんなことばっかり分別(ふんべつ)がついて。
大人になるって、あんまり楽しいことじゃないみたい。
カノンが微笑むポスターを見上げて、あたしは深いため息をついた。
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