第3話 オーディション当日

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緊張を紛らわそうとそんなことを考えていたら、何かの順番が回ってきたみたい。 優しそうなスタッフさんに連れられて、あたしは別の部屋へと案内された。 「今から順番に、ヘアメイクとカメラテストをしてもらいます」 明るいライトに照らされて鏡に映るあたしは、自分でもわかるぐらい引きつった顔をしている。 「緊張してるかな? リラックスして、軽く目をつぶっててね」 「はい! あの……あたし、メイクとかしたことなくて……」 「そうなの? じゃあきっとびっくりするよ。すっごくかわいく変身させてあげるから」 「……はい」 ドキドキしながら目を閉じる。 いい香りのクリームを塗(ぬ)られたり、ふわふわのパフで顔をなでられたり。 あたしは目をつぶったまま、「ちょっと顔を上げて」とか「横向いてみてね」とか、メイクさんに言われるまま、時々顔を動かすだけ。 どんなふうに変わるんだろう、これで少しは大人っぽくなれるかな、なんて考えていたら、いつの間にかメイクが完成していた。 「はい、出来上がり」 ポンと肩を叩(たた)かれて、そっと目を開けてみる。 「わぁ……!」 すごい! すごいすごい! 自分の顔なんて見慣れてるはずなのに、鏡の中には別人みたいなあたしがいた。 嬉しくてじっと鏡を見つめてしまう。 「どう? 気に入ってもらえた?」 「はい! ありがとうございます!」 「どういたしまして。優奈ちゃん、お肌がキレイだからメイクしやすかったよ。オーディションもがんばってね!」 「はい!」 お化粧の効果とメイクさんの応援で、気分も盛り上がってくる。 足どりも軽く、カメラテストの列に並びながら、そっと顔を触ってみる。 ほっぺはさらさらしたパウダーの感触。 まつげはビューラーとマスカラでくるんと持ち上がっている。 (まるでモデルさんみたい!) こんな楽しいことをしてもらって、おまけにかわいい服を着て写真まで撮ってもらえて、モデルさんってなんて楽しそうなお仕事なんだろう。 でも浮かれ気分はそうそう長くは続かなかった。 「次、13番の皆本優奈さん」 「は、はいっ!」
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