第3話 オーディション当日

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名前を呼ばれて、あたふたと撮影セットの指定された位置に立つ。 背中側にはカーテンみたいな白い背景、正面からはいくつもの大きなライト。 カメラだって本格的に大きなもので、スタッフさんやスーツを着た大人の人が何人も、あたしひとりに注目している。 「じゃあまずは顔のアップからね。はい、笑ってー」 どうにか笑顔を作ってみるけど、明らかにぎこちない。 しかも焦(あせ)れば焦るほど、うまく笑顔が作れない。 「じゃ、次は自分が一番かわいいと思うポーズを撮影するからね。好きなポーズをとって」 (えー!? どうしよう……) 前に並んでた女の子たちは、まるで本物のモデルさんみたいにポーズを決めていたけど、あたしはどうしていいのかさっぱりわからなくて、じたばたしてるだけ。 ──カシャッ! パシャッ! それなのに次々とシャッターは切られていく。 (このままじゃ、ヘンなポーズだけで終わっちゃう!!) 追い詰められた頭に思い浮かんだのは、毎日眺めていたカノンのポスター。 (確かこうだった……!) カノンと同じになんてなれないけど、それでも必死にポーズを決める。 ──カシャッ! 「はい、OKでーす」 「あ、ありがとうございました……」 テスト撮影が終わると、女の子全員が同じ部屋に集められた。 「ではこれから、1人ずつ順番にどんなモデルになりたいかと、特技を発表してもらいます」 (やだな~。そういうの苦手なのに) テーブルには審査をする編集部の人や、ファッションブランドの人が並んでいる。 みんなあたしのお父さんやお母さんと同じぐらいの大人たちばっかり。 (あの子は……!) そんな中、ひときわ目を引く女の子。 (カノンだ! 本物だー!!)
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