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「だってさー、大変そうじゃん、いろいろと。いつもニコニコしてなきゃいけないしさー」
「そうなのかなぁ?」
いざ現場をのぞいて見たら憧れが膨らんだけど、モデルの仕事って実はよくわかんない。
オーディションでメイクをしてもらったり、スタイリストさんが選んでくれた服を着るのは楽しかったんだけど──。
(楽しいことばっかり──ってことはないよね、やっぱり)
「でもホント、見直しちゃったよ、ユウのこと。ユウ、結構人見知りなとこあるじゃん?」
「直さなきゃいけないって思ってるんだけどね」
「そのうち直るっしょ! だってカノンに会いたいってだけで、モデルのオーディション受けに行っちゃうんだよ。その度胸があれば、ほかのことなんてたいしたことないって! だからさ──」
彩があたしの顔をのぞきこむ。
大きな目は好奇心いっぱいって感じで、なんだか猫みたい。
「佐久間先輩のことも、もっとがんばってみなって」
「ええーっ! 無理! 恥ずかしいし!!」
「なんでよ~」
「だってあたしなんかじゃ無理だよ……」
「どうして。もうフラれたの?」
「そうじゃないけど……」
「つまりユウが勝手に『あたしじゃ無理!』って決めてるだけでしょ? カノンに会えるって限らないのにオーディションには応募できて、どーして佐久間先輩はあきらめちゃうの」
「どうしてって言われても……」
オーディションならカノンに会う前に落ちちゃったって、自分がヘコむだけで済む。
それに友だちに言わなければ、オーディションを受けていたこと自体、誰にも知られずに終われるし、なんならまた来年再挑戦することだってできる。
でも好きな人にアピールしたり告白するのはまた別だ。
「だって……オーディションはカノンに会うのが目的だったから、モデルはなれればラッキーぐらいだったし……。それにもし、もしもだよ? あたしが勇気を出して告白して、先輩にフラれちゃったら、そのあとどうしたらいいのかわかんないもん」
「次の恋をすればいいっしょ」
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