6102人が本棚に入れています
本棚に追加
/911ページ
「そんな簡単なもの~?」
「ウチはそうだけどなー」
「そりゃ彩はかわいいから、男の子にフラれることなんてないだろうけど……」
「あるある! 超あるって! そんなモテまくってたら、今ごろかっこいい彼氏を作ってラブラブしてるし!」
「そ、そっか」
「まーね、ウチもユウに偉そうなこと言ってるけど、いざ誰かを好きになると、そう簡単に告白なんかできないよねー」
「そうだよ~」
思わず2人並んでため息なんかついちゃったりして。
でもいつまでもぐずぐず思い悩んでるあたしと違って、彩は切り換えが早い。
「だけどさ、やっぱりここぞってときは勝負しとかないとダメだよ! このまま遠くから見守ってるだけじゃ、夏休みの間に忘れられちゃうかもよ」
「それは困る! けど……」
「けど?」
「忘れられる前に、覚えててくれてるかどうか微妙……」
「…………」
本当はあたしだってわかってる。
佐久間先輩のことが好きだっていうなら、このままじゃいけないってことを。
でも一歩踏み出すには、あと少しの勇気が足りない。
(オーディションに合格すれば、少しは自分に自信がつくかもって思ったんだけどなぁ)
立ち上がって屋上のフェンスにコツンとおでこをぶつける。
グランドでは陸上部らしき人たちが、暑さに負けず練習をしているみたいだ。
でもこんなに離れていたら、佐久間先輩がどれかなんてわからない。
(運命の赤い糸が見えたらいいのに)
もし赤い糸があったなら、あたしの糸が佐久間先輩につながっているかを確かめられたのに。
でもきっと、そうなってもあたしはもつれた自分の糸が、誰につながっているか確かめられないんだろう。
(結局必要なのは、あたしの勇気ってことか──)
最初のコメントを投稿しよう!