第1話 偶然の出会い

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「1組の教室、ここだから」 「あ……はい! ありがとうございます!」 「おう」 スタスタと歩いていく先輩の後ろ姿をぼんやり見つめるあたし。 まだ心臓がドキドキしてる。 先輩の後ろ姿はもうとっくに見えなくなってるのに、その場から動けない。 もしかして、もう1回戻ってきてくれないかな……なんて想像してみるけど、もちろんそんなはずはなくて。 代わりに、教室のドアの前で立ち尽くすあたしに声をかけたのは、ショートカットのカワイイ女の子だった。 「1組のコ?」 「あ、はい」 「じゃあ同クラじゃん。ウチ、牧野彩(まきの あや)。南小出身ね。そっちは?」 「あたしは皆本優奈。北小から」 「北小かぁ。てかさ、中入ってないとやばくない? もうすぐチャイムだよ」 「ホントだ!」 慌(あわ)てて教室の中に入る。 牧野さんは同小だった子がクラスの中にいたらしく、「これからよろしくね」ってあたしに言い残すと、すぐにそのグループにまじっておしゃべりを始めてしまった。 (いいなぁ、知ってる子がいて) ひとりぼっちのあたしは、黒板に貼られた座席表を確認して自分の席に着く。 窓際なのはラッキーだけど、友だちがいないゆううつさはそんなことじゃ打ち消せない。 頬杖(ほおづえ)をついて、にぎやかな教室を眺(なが)める。 (…………さっきの先輩、カッコよかったなぁ) いっしょにいたのはほんの数分なのに、佐久間先輩の顔はくっきりと心に焼きついて離れない。 (また会いたいな……。もう一度会えたら、今度はもっと話してみたいし) ──もっと話してみたい? 教室でこれからいっしょに1年を送るクラスメイトとも、まだ話せてないあたしが? 押さえ込んでいた不安が、ムクムクとわき上がってくる。 別に暗い性格ってわけじゃないけど、あたしは自分に自信が持てない。 勉強ができるわけじゃないし、スポーツだって人並で、顔は特別かわいくもないし、スタイルだってパッとしない。 好きになれない自分に自信を持つことはできなくて、ついつい人見知りも激しくなっちゃって。 こんな性格変えちゃいたいって自分でも思ってるけど、そう簡単にはいきそうにない。 楽しそうに笑う牧野さんを見ながら、ひっそりため息をついた。 (あのぐらいかわいかったら、もっと積極的になれたかなぁ)
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