第1話 偶然の出会い

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同い年なのに牧野さんはかわいくて明るくて、クラスの中にいても目を引く。 その証拠に、さっきから男子たちが彼女のほうを見てはなにか噂し合ってるし。 (いいなぁ、あたしもあんなふうになりたい) これで今日何度目になるかわからないため息。 「ユウ、ユウナってば。おーい!」 「は……はい!?」 「なにボーっとしてんの! もうみんな、体育館行っちゃったよ!」 「体育館? なんで?」 「入学式に決まってるじゃん。ほら、急がないと遅れて恥ずかしいよ!」 確かに、さっきまで騒がしかった教室はいつの間にかもぬけの空。 同じくガランとした廊下を、あたしは牧野さんに引っ張られながら歩く。 「もしかして牧野さん、あたしを待っててくれたの?」 「だって先生が入ってきてもずっとボンヤリしてるしさ~。放っとけないっしょ? あと、ウチのことは彩でいいよ。ウチもユウナのことユウって呼ぶから!」 「うん、ありがとう彩!」 「いえーい。友だち友だち」 彩がつないだ手をブンブンと振る。 「やったね。ウチ、ユウみたいなかわいい女の子、大好きだし! あとでケータイの番号とアドレス交換しよ」 「えっと……あたしまだ、ケータイ買ってもらってないんだよね」 「わかるわかる。ウチも親の説得、超大変だったもん」 「そっか~……」 「そうそう……ってヤバ! 早く行かなきゃホントに入学式始まっちゃうよ!」 あたしの手を引いて笑う彩の顔はヒマワリみたいで、やっぱりかわいいなってあたしは思った。 ──入学式の間中、佐久間先輩がいないかなってキョロキョロしてみたけど、さすがにというかなんというか、全校生徒が集まった中から見つけ出すことはできなかった。 来たときはひとりだった校内を、帰りは彩やその友だちといっしょに歩く。 でも同小だった3人の話題にあたしはついていけなくて、ちょっと退屈になってため息をついた。 下駄箱で靴を履き替えて校門へ。 まぶしい太陽が照らすグラウンドでは、陸上部らしき人たちが練習に励(はげ)んでいる。 (あれ……?)
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