第2話 運命のオーディション!?

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「うん。ウチも何回か会ったことあるし。時々家に遊びに来るからさー」 「ええええーっ!?」 今までずーっと遠くにいた佐久間先輩が、急に近くに来たみたいだった。 「じゃーさ、今度佐久間先輩紹介してあげるよ!」 「いや、い……いいよいいよ!」 「なんで~」 「だって恥ずかしいもん!」 「最初だけだって! 佐久間先輩ってかなりモテるっぽいから、このぐらいしないとライバルに負けちゃうよ?」 (やっぱモテるんだー……) 「でも~……」 願ってもない話なのに、素直に「うん」とは言えない。 その原因がなんなのかは、もちろんあたしにもわかってる。 (だってあたしなんか、佐久間先輩に相手にもしてもらえるわけないし……) 自分でも好きになれない自分を、佐久間先輩が好きになってくれるはずがない。 「そんな弱気じゃダメだって! だからさ──」 「あー! 彩いたー!」 言いかけた彩を呼んだのは、彩と同小だったナナカとミオ。 2人は彩の親友だけど──あたしも親友かって言われると、かなり微妙なところ。 (あたしがいたら、ジャマになっちゃう……) 「彩、ごめん。あたしそろそろ帰るね」 謝(あやま)るジェスチャーをしながら立ち上がるあたし。 「えー、まだいいじゃん」 「ごめん! 今日はちょっとお母さんと約束があるから」 そう言って、あたしは小走りに屋上をあとにした。 ──もちろん、お母さんと約束があるなんて大ウソ。 家に帰ったあたしは制服のまま、ベッドの上に倒れ込む。 「…………彩はいいな」 かわいくて明るくて、自分に自信がありそうで。 それは全部あたしが欲しくて、でも持っていないもの。 (彩みたいになれたらいいのに) そうしたらきっと、毎日が今よりずっとずっと楽しくなると思う。 もちろん今だって、つまらないわけじゃない。 勉強は嫌いだけど学校に行くのは楽しいし、それなりに充実してるとも思う。 でも──そう、何かが足りないって思うのだ。 楽しいんだけど、本当にこれでいいのかなって。 でも足りないものが何なのか、それがあたしにはわからない。 心にぼんやりと、でも確かに穴が空いていて、どうやってそれを埋(う)めたらいいのかわからないような気持ち。
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