雪の降る街で――

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「・・・誰や?お前」 年の頃は小学生低学年くらいか・・・? 酷く怯えた目をしている。 「ぁ・・・」 あまりの事に咄嗟に言葉が出なかった。 滅多な事では驚きはしないが流石に、これは... 「悪ィ、寒いよな」 散々間を空けておいて、やっと口を出た言葉がこれか、と少し自己嫌悪に陥る。 毛布を返してやると、奪い取る勢いで取り返し、再び毛布にくるまる女の子。 「・・・家出、か?」 今度は怯えさせないように、優しく声を掛けてみる。 もぞもぞと蠢いた後、ひょこっと顔だけ出てきた。 「・・・。」 何も話さないが、目だけは何かを訴えるようにじっと目を見てきた。 「そか。・・・じゃな」 これ以上関わっても仕方ないし さっさと用事を済ませて早く帰ろう。 ホットココアを買って踵を返す。 毛布にくるまった女の子はまた深く毛布を被り、表情は分からない。 「はぁ・・・寒っ」 ホットココアで冷えた両手を暖めながら歩く。 振り向けば変わらず女の子はそこにいた。 「・・・ぁー、クソ」 悪態をついて来た道を戻る。 「おい」 驚いたようにぴくりと跳ねて毛布から女の子が顔を出す。 「ちょっと、来い」 腕と思しき部位を掴んで無理やり立たせる。 女の子は驚きに目を見開き、抵抗して踏みとどまろうとする。 「いーから、ついてこいってんだコラ」 ずるずると引き摺るように腕を掴んで歩き出す。 (あぁ・・・側からみたら危ないヤツだよな、アタシって) 嫌がる女の子を無理やり連れ歩く女子高生。 それはきっとあまり良いものではないだろう。 諦めたのか抵抗するのも止め、手を引かれるままについてくる女の子。 「飲め、ホラ」 歩きながら、先ほど買ったココアを持たせる。 いらない、とでも言いたげに首を横に振るが 「あぁ?」 と言えばおずおずと両手で持ったココアの缶をすすり始めた。 熱かったのか、ぴくっと跳ねてふーふーと息を吹きかけて冷ましていた。 「熱かったか?」 女の子は何も言わずこくんと頷いた。 吐く息は白く、寒さは厳しさをますばかりだったが、 繋いだ手だけは、確かな温もりが存在した――――
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!