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「・・・誰や?お前」
年の頃は小学生低学年くらいか・・・?
酷く怯えた目をしている。
「ぁ・・・」
あまりの事に咄嗟に言葉が出なかった。
滅多な事では驚きはしないが流石に、これは...
「悪ィ、寒いよな」
散々間を空けておいて、やっと口を出た言葉がこれか、と少し自己嫌悪に陥る。
毛布を返してやると、奪い取る勢いで取り返し、再び毛布にくるまる女の子。
「・・・家出、か?」
今度は怯えさせないように、優しく声を掛けてみる。
もぞもぞと蠢いた後、ひょこっと顔だけ出てきた。
「・・・。」
何も話さないが、目だけは何かを訴えるようにじっと目を見てきた。
「そか。・・・じゃな」
これ以上関わっても仕方ないし
さっさと用事を済ませて早く帰ろう。
ホットココアを買って踵を返す。
毛布にくるまった女の子はまた深く毛布を被り、表情は分からない。
「はぁ・・・寒っ」
ホットココアで冷えた両手を暖めながら歩く。
振り向けば変わらず女の子はそこにいた。
「・・・ぁー、クソ」
悪態をついて来た道を戻る。
「おい」
驚いたようにぴくりと跳ねて毛布から女の子が顔を出す。
「ちょっと、来い」
腕と思しき部位を掴んで無理やり立たせる。
女の子は驚きに目を見開き、抵抗して踏みとどまろうとする。
「いーから、ついてこいってんだコラ」
ずるずると引き摺るように腕を掴んで歩き出す。
(あぁ・・・側からみたら危ないヤツだよな、アタシって)
嫌がる女の子を無理やり連れ歩く女子高生。
それはきっとあまり良いものではないだろう。
諦めたのか抵抗するのも止め、手を引かれるままについてくる女の子。
「飲め、ホラ」
歩きながら、先ほど買ったココアを持たせる。
いらない、とでも言いたげに首を横に振るが
「あぁ?」
と言えばおずおずと両手で持ったココアの缶をすすり始めた。
熱かったのか、ぴくっと跳ねてふーふーと息を吹きかけて冷ましていた。
「熱かったか?」
女の子は何も言わずこくんと頷いた。
吐く息は白く、寒さは厳しさをますばかりだったが、
繋いだ手だけは、確かな温もりが存在した――――
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