雪の降る街で――

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「ただいま~・・・ってな」 ドアを空けて、鞄を放る。 エアコンとこたつの電源を入れて、ソファーに深く座る。 「テキトーに座りなよ」 入り口で所在なさげに佇んでいる女の子に声を掛ける。 こくんと頷いて部屋の隅っこで膝を抱いて座る女の子。 気楽なものだ、一人暮らしは。 どんなに遅くなろうが誰を連れ込もうが、口煩く言われる事はない。 「お前、メシは?」 ふるふると首を横に振る。 何も食べてないのか。 「ちょっと待ってろ」 自炊などほとんどしないができないでもない。 ただ一人分作るのが面倒なだけで。 料理する間に給湯のパネルを押して、浴槽に湯を溜めておく。 (あんまり熱くしたらマズイよな) いつも茹で上がるほど熱めに設定するので若干設定温度を下げておく。 (よし...こんなもんかな) 冷蔵庫の中から適当な食材を取り出し、足でドアを閉める。 子供が好きそうなものは・・・ (・・・アレだな) ちょうど材料も足りるし。 リビングの方を見ると、女の子は隅っこにいたまま動く気配がない。 「こたつ入ってろよー」 一声掛けて、また料理に専念する。 どのくらいの間あそこにいたのだろうか。 どういう経緯で家を出たのか。 歳はいくつで名前はなんだろうか。 疑問は尽きない。 (名前くらいは聞いておかないと...) 子供の足でそう遠くまで歩けるとは思えない。 恐らく、近所に住んでいるんだろうが... 名前を聞けば分かるかもしれないし。 考え込んでいるうちに出来上がったので皿に盛ってリビングまで運ぶ。 「そーら、出来た。食え」 出来たオムライスを女の子の前に置いてやる。 空腹だったのだろう、ぺこりとお辞儀をして食べ始めた。 特にする事もないのでテレビをつける。 「名前、なんてーの?」 女の子は食べる手を休め、何か言おうと口を開くが何も言わず俯いてしまった。 「まぁ、いいや。どっから来たの?」 次の質問にも女の子は俯いたまま首を横に振るだけだった。 分からない?いや、言えないのか? まぁ無理して聞き出すこともないだろう。 あたしはテーブルに頬杖をついてテレビに集中した...
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