特別な日

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そう言うと、ホーエンハイムはオレたちに背を向けた。 「おっ…おい!!ちょっと待てよ!」 オレはホーエンハイムに声をかけたが、あいつは振り返らなかった。 仕方なく、オレは遠退いていくあいつの背中を、ぼーっと見つめていた。 「行っちゃったね……」 「あぁ……」 オレは、あいつが消えていった地平線を眺めながら言った。 「兄さん」 「ん?」 「父さんの……気付いた?」 「…………部屋に戻るぞ」 アルの質問には答えずに、部屋に向かった。 「あっ!まってよ兄さん!気付いてたんでしょ?ねぇ?」 「あーなんの事だ?知らねーよ!!」 オレがそう答えたのは、照れ隠しだったのかもしれない。 本当はちゃんと気付いてたさ。 あいつが、オレのコートと同じ色の真っ赤なネクタイを着けていた事。 ちょっぴり嬉しいと思ったのは、誰にも言わないでおこう…… なんだかんだ言って、オレはあいつの事を、父親として認めているから……… -end-
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