二人の兎

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不意にぽっかりと空いた空間に出た。といっても辺りが木で囲まれているのに変わりはない。ただそこだけ、直也には何かが忘れられたように感じられた。 「ここか?」 直也が聞くとポケットからダイヤの7が飛び出してきて地面一帯を走り回った。 「ここ、ここですよぅ。間違いないです」 ウカレ兎が三月兎を誘拐した場所。直也は眉間に皺を寄せてしゃがみこんだ。 枯れ草ばかりの地面に、足跡や何かヒントになるものは残っていない。 「駄目か…」 指先で土を触ると、元の世界と変わらない柔らかさで、冷たく湿っていた。さらさらと指の隙間から砂が流れ落ちる。 「アリス、アリス~!!」 「どうした?ダイヤの…」 7、と言おうとしたところで、その姿が見えないことに気づく。 どこまで走ってったんだ…? 仕方なしに立ち上がって辺りを見回す。しかしトランプ一枚、こんなところにあったとして見つけられるだろうか。 「ここですよぅ~」 ぴょんぴょんとダイヤの7が跳ねたのは直也から数メートル離れた辺りだった。 「どうした?」 クローバーの8もポケットから飛び降りる。着地に失敗したのを見届けてから、直也はダイヤの7に歩み寄った。 「ああぁ、あんまり散らさないで下さぃ!!」 「え?な、何が…」 足下を見ても何も無いのに。あるとしたら枯れ葉か? 「三月兎の足跡ですぅ!!」 ダイヤの7はガサガサと枯れ葉をかきわけながら言った。 「足跡…?こんな枯れ葉ばっかじゃ足跡も何も……」 「ここの住人は気配を残すことができるんです。それは誰かに宛てる場合もありますが今回のは誰でもわかるようになってますねぇ。私たちはこれを"足跡"と呼んでるんですよぉ」 気配残すって…俺もできるようになったりすんのかなあ……? 「かなり薄くなってますねぇ。ウカレ兎に気づかれないようにするにはこれが限界だったんでしょうけど…」 「追えそうか?」 ダイヤの7はう~んと唸りながら腕を組んだ。そこにクローバーの8が走り寄ってきて枯れ葉を蹴散らす。 「ああぁ!!何するんですかぁ」 慌てるダイヤの7を無視してクローバーの8は何か捜すようにガサガサとやっている。その姿が枯れ葉に埋もれて少したった頃、クローバーの8はようやく声をあげた。 「西に528、北に397」 「そこに三月兎がいるのか!!?」 「……急ぎましょう、足跡が消える前に」 直也は急いでトランプ兵を抱えてその方角に走り出した。
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