二人の兎

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「駄目だ…ここで途切れてる」 クローバーの8は枯れ葉をガサガサと揺らし、ダイヤの7はそこらじゅう走り回る。ここに来るまでに少なくとも3回はこれと同じ事をした。けれどそれも、ここまでのようだ。 直也は見るからに肩をおとし、地面を睨みつける。 何もできないのか…俺は…… アリスなんて名前だけだ。所詮三月兎一人助けられない。俺は… 「……くそっ!!」 ダンッと地面を蹴るとトランプ兵が動きをとめて直也を見た。その目は心配そうに直也を見上げる。けど直也は、彼等を気にする余裕もなかった。 ……どうすればいい? 言いようのない焦りと苛立ち。理由なんてない。わかってる。ならどうしたらこれを抑えることができる…? 「どうしたら…その"足跡"ってのを感じることができる?」 直也の問いに二人は顔を見合わせる。そして順番に口を開いた。 「そんなのはぁアリス」 「集中するだけですよ」 二人のさっきの行動を思うと集中していたようには見えないけど。 集中の仕方なんて人それぞれか… 「すればいいんだな……集中…」     俺がアリスだっていうなら……     目を閉じて三月兎の姿を思い浮かべる。 しかし数秒もしないうちに直也は大きく息をはいて目を開けた。 「あーもー無理っ!!こんなんできるわけねーじゃん」 何やってんだ…俺は。 こんなことをするぐらいなら、辺りを探しまわった方が確実だ。だいたい気配残すとかそんなんが、たとえアリスの名をもらったとしても住人ではない自分にできるわけがない。 ……落ち着け。 「なあ、こっからはふたてに別れて探さないか?」 「ふたてに…ですかぁ?」 「その方が早く見つかるかもしれないだろ?だからここからは俺とお前らは別行動で……」 「絶対に駄目ですっ!!」 納得したダイヤの7とは反対に、クローバーの8は悲鳴にちかい大声をあげて直也の足に飛び付いた。 なんだか顔が青白い。 「危険なんですよ?!!」 「大丈夫だよ。だって俺アリスだし…」 「足跡もわからないアリスなんて無能です!!やくたたずです!!だから一人でなんて絶対に無理です~!!!!」 三段階に攻撃を受け、言葉の槍が頭や背中に突き刺さる。案外容赦ないな、こいつ…… 「でもその方が効率的で…」 「迷子になるのがオチですよ!!」 よいしょよいしょと登ってきたクローバーの8は直也の襟首を掴んで言った。 「別行動なんて、絶~~っ対に駄目です!!」
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