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「まあ…そこまで言うならいいんだけどさ」
俺だってこんなところで一人になんの嫌だし。
帽子屋とはぐれた時の怖さを思い出して身震い。少しトラウマ気味なそれを、直也は首を振って記憶の片隅においやった。
「本当にいいんですかぁ~?」
ダイヤの7の声にクローバーの8がびくりと体を震わす。
「何が?」
「別行動ですよぅ。私はそれに賛成しますよぉ?」
「でも…危険なんだろ?」
ダイヤの7はにやにやと気持悪い笑みをうかべながらクローバーの8を盗み見た。
「クローバーの8は怖がりなんですよぅ」
ダイヤの7は小声で言ったが、しっかり聞いていたクローバーの8の跳び蹴りが無防備な背中を見事にとらえる。ダイヤの7はそのまま前に倒れ、じったばったと腕を振り回した。
「お前怖がりなん…………いっ!!?」
言おうとした直也の足にクローバーの8がまたもや跳び蹴り。脛に当たったからか痛みのあまりうっすらと涙ぐんだ。
「いくらアリスでもそれ以上言ったら許さないですよ……?」
……………怖っ。
「アリスを脅迫するなんて…王女様に言いつけますよ」
いつの間にか起き上がったダイヤの7がよろよろと歩いてくる。それをクローバーの8は興味無いなとばかりに溜め息をついた。
………この二人…仲悪いのか?
やっちゃったかなと思いながらももうどうしようもないので、とりあえず今どうするかを考える。
「そっちが二人きりになりたくないって言うなら三人で別行動にすればいいんだけどなぁ……」
クローバーの8が怖がりってことは、こいつは二人以上じゃないと嫌なんだよな…。でもダイヤの7のことは嫌い……だとしたら、
ちらりとダイヤの7を見ると、彼は「いいですよぉ。私が一人行動でも」と言った。考えていたことは同じらしい。
「クローバーの8もそれならいいか?」
しぶしぶという感じだが、クローバーの8も頷いてくれた。
「じゃあそうするか」
早いとこ三月兎を探さないと。
「なら私はこっちに行きますねぇ」
「おう。よろしくな」
ダイヤの7が走って行き、枯れ葉がかさかさと音をたてる。直也はそれを聞きながら、ダイヤの7とは正反対の方向に歩き始めた。
「よーっし!!行くかぁ!!」
気合いを入れて大声をあげる直也とは反対に、クローバーの8は顎に手をあてて考え込む。
「………どうかしたか?」
「…ダイヤの7が行ったのって……今私たちが来た方向じゃないですか?」
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