遠い記憶

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「…………アリス」 王女様がトランプを握り締めながら直也の方を向く。かなり力が入っているのだろう。トランプは苦しそうに細い腕をバタバタと振り回していた。 「アリスは白い薔薇が好きなの…?」 王女様の言葉を聞いたトランプは青い(というか白い)顔で直也を見た。 そんな顔すんなよ…!! 「アリス、白い薔薇は…」 「~~~そうだよ!!俺…薔薇は白いのが好きなんだ!!」 もうこうなったらやけくそだ。いくらトランプだからといって助けを求めているやつを見捨てるなんてことはできない。 ああもう…俺の馬鹿…… 死刑っていうからには首つりか首きりだよなあと現実逃避な妄想を繰り広げる。その間王女様は下を向いて、何か考えこんでいる様子だった。 さすがにアリス殺すのは迷ってんのかな。ここアリスの国だもんなー…   「決めましたっ!!」 急に顔をあげた王女様はよりいっそう手に力を込めて言った。 「アリス、あなたを死刑にします!!」 あー……トランプ泡ふいちゃってるよ…………って… 「死刑!!?」 本気かよ… 「しかしアリス、わたくしにも良心はあります。なので条件をのんでいただけるのであれば死刑は取り止めにします」 「条件…?」 「わたくしと結婚しなさい、アリス」 殺されたくなければ結婚しろ、か… 冷静に王女様の言葉を考える。 結婚………結婚?!! 「まだ…諦めてなかったの……?」 「わたくしだってアリスを殺したくないもの」 「だったら死刑なんかにしなきゃいいんじゃ…」 「もう決めたことなのよ」 にっこりと王女様が微笑む。 あ、この黒い笑み前にも見たことあるぞ… 「……あのさあ」 「どうしました?」 「やっぱ死刑はやめにして国から追放とかでよくない?その方が俺も助かるし…」 「国から追放ですって!!?何を言っているかわかっているのアリス!!」 突然怒鳴った王女様に、直也は自然と後ろへさがる。しかし王女様は間合いをつめようとどんどん近づいてきて、その差は縮まらない。 「ちょ…ストップ!!」 とうとう植木でさがれなくなった直也は、これ以上王女様が近づけないようにと腕を伸ばして止めた。 「なんで死刑はよくて追放は駄目……?」 どちらもこの国に住む者にとっては同じことだと思うんだけど…… 「なんでって…」 王女様はきっぱりと直也に言った。 「アリスの骨をこの地に埋めるためよ」
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