遠い記憶

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アリスの骨を…この地に…… 直也は冷や汗が背中を流れていくのを感じながら、王女様から目を放さずにいた。 油断したら殺られる……!! 「これまでのアリスも皆通った道よ。一人だけをのぞいてですけど」 「それって…」 「……前代アリス。彼の骨もわたくしは埋めるつもりでしたのに…」 悔しそうに王女様は眉間に皺をよせる。 「どうして……」 そんなことをしてなんになる?そもそも骨なんかどこに…   埋められるとこ…   直也はゆっくりと振り返る。遠くに見える丘が、けれど前に丘を目指していたときより近くにある。 あれは…… いくつかの棒が、地に突き立てられている。 お墓だったんだ…アリス達の…… 「わたくしもいつかは死ぬわ…」 王女様も丘を見上げてぽつりぽつりと話す。 「せめてその時だけはアリスと一緒にいたいの…」 例え結婚を断られても、せめて永遠に眠るときだけは…… 「…駄目だよ……そんなの駄目だ」 直也はぎゅっと拳を握り締める。 「ちゃんと好きな人と結婚しなきゃ…駄目だ」 「アリス…?」 「駄目…だよ……」 何が悲しくて泣いているのか。わからないけれど、王女様の想いが痛かったんだ。真っ直ぐに胸に突き刺さる。けど…柔らかくて…優しくて…… たぶんその和らげられている部分は全部、王女様が背負ってきたんだ…… 「俺は王女様に…幸せになってほしいよ」 王女様はそっとハンカチを差し出した。 「あなたはとても優しいアリスなのね」 そんなあなたが、わたくしは好きよ……───           「聞かせてほしいんだ。王女様が知ってること全部…」 広い部屋で直也と王女様は小さなテーブルを挟んで向かい合わせに座っていた。テーブルの上にはティーポットと湯気がのぼる紅茶の入ったカップがふたつ。紅茶は王女様が好きなローズヒップだ。帽子屋が好むダージリンとの味の違いはわからないけれど、色が綺麗だと思った。それからクッキーの盛られた皿がひとつ。二人ともそれには手をつけない。 「俺は今日そのために来たんだ。帽子屋は嘘吐きで…意地悪だから」 「そんな言い方されたらわたくしは話さないわけにいかないじゃない。アリスも十分意地悪だわ」 王女様は紅茶を一口飲んでから「でも……そうね」と話し始める。 「随分昔のこと……わたくしがこの国に来たときアリスはまだ4代目だったわ…」
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