依頼者  堤 純平

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*  この数日は真夏日や猛暑と呼んでも生温い程に暑かった。  そして今日もやはり暑い。  日に日に熱中症患者は増加しているとニュースで見たな。  長身で細身、その割には筋肉もしっかり付いていて、何かしらスポーツをやっているのではないか、と勘違いされやすい少年――高木誠はなんとか暑さを紛らわそうと、そんな事をぼんやり思い出した。  しかし彼の暑さは他の人とは少し違う。何故か? 相も変わらず全力疾走で学園に向かっているからだ。  滴る汗に不快感を感じたのか、足を止めた。  いや、違うようだ。  肩で息をしながらも、闘志の籠った両の眼は前方をやや上目遣いで睨み付けている。  その相手は最早好敵手と呼んで差し支えないであろう、二年と二ヶ月を毎日のように闘ってきた坂。  呼吸を整え、一足飛びに駆け出す。  湿った制服が肌に張り付き動きが制限され、苦悶の表情を浮かべる。そのもどかしさは暑さに拍車を掛け、更なる発汗を促す。  これ程見事な負の連鎖も珍しい。  それでも誠は止まらなかった。 「だあぁ! ちきしょおぉ」  が、やはり予鈴は坂の半ばで聞こえてきた。
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