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「…愛野ちゃん、寝ちゃった?」
そよそよ吹く優しい風、
若々と茂る深緑を揺らす。
生きる希望にあふれている世界。
(だけど、きっと俺たちは違う)
「―うん」
「……起きたら、ユナや俺のことを覚えてないの?」
「……そうですね。」
ユナはこっちを見ないけどたぶん泣いてる。
「………でも、時がきたら…
…愛野さんを心から愛して、支えてくれる人が現れたら…
その時また、動きだすから。」
「俺たちも、さよなら?」
「…―そうですね。」
「…いや、だなあ。」
ふにゃっと笑いながら言ったつもりだったのに言葉につまった。
ユナが優しく俺を抱きしめる。
「泣かないでくださいよ。ほんと泣き虫ばっかり、」
「泣いてないもん、」
「わーわー、そんな顔してよく言うわ。」
「…ユナだって、泣いてるじゃん」
ぎゅうっと抱き返す。
あったかい。
「…また会えます、また、絶対会えるから。」
ユナは震えてた。
愛しくて、哀しくてあふれだす涙が止まらない。
(また会える日まで、さようなら。)
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