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 車やバイクが、歩く人間なんて無視の状態でビュンビュン走る時代に、私は恐怖と不安という感情しか持たなかった。そんなに急いでいたら、大切なものを落としてしまいそうで。でも、そんなことを気にしているのは私だけなのだろうけど。 「にゃー」 「?」  猫の声がした。  猫は好きだ。こんなに何もかも早く過ぎ去ってしまう時代に、「ゆっくりとした時間」を与えてくれるから。しかし、何処の猫だろう。ここら辺りでは見ない猫だ。毛並みも整っている。頭を撫でると気持ちよさそうに目を閉じる。  猫は私を誘うように家の中に入っていった。誰の家だろう。いや、お店か。ここは通学路だからいつも見ているけど、開いてるのか閉まっているのか分からない上、人もいないような気がしてならない。しかし、猫は入っていく。私も猫を追うようにして入った。怒られたときは、つい猫についていってしまって・・・とでも言っておこう。 「いらっしゃい」  
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