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 入った途端に、少し枯れた声が聞こえてきた。声の主を探そうと辺りを見ると、大きな椅子に座ったおじいさんがいた。 「客人なんて、久しぶりだね」 「は、はあ・・・」 「御用は何かな?」 「あ、いや、ただ・・・猫が可愛くて・・・」  正直に言うとおじいさんは笑い出した。失礼だな。可愛いものは仕方がないじゃないか。それが顔に出ていたのか、おじいさんはすまないと笑いながら謝った。謝罪の気持ちなんてこれっぽっちもないだろうけど。 「あの、ここの猫ですか?」 「まあ・・・そうなるかな?」 「・・・?」 「野良猫だったけど、いつの間にか懐いたんだよ」  そうなのか。野良だったんだお前。  猫に目で語る。  なんとなく意味が通じたのか、或いはまったく分からないのか、擦り寄ってきた。人懐っこい猫だ。捨て猫なのだろうか。きっとそうだろう。かわいそうに。  
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