友達の友達は友達という考え。

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「なに?その必死な顔?ウケルー」 笑い声とともにあきなちゃんが私の目の前に現れます。 所在なくふらふらと浮遊している私と違ってあきなちゃんは空中で堂々と仁王立ちしていました。 「どう田中?この世界は」 この世界。 サイケデリックな様相に変貌してしまったこの世界。 私は混乱している頭をどうにかして揺り起こそうとしましたが、どうも上手くいきません。 一体この世界はなんなんでしょうか? 「混乱するのも無理ないわね。……田中。教えてあげる。この世界は超能力者にだけ開かれたパラレルワールドよ」 パラレルワールド? 「そう。私たちの住んでいる世界とは隔絶された平行世界。よくSF小説なんかにも出てくるでしょ?」 確かに私がよく読む小説の中にもパラレルワールドという言葉は出てきます。 ただそれは小説の中、創作の世界の中の話であって事実とは違うものだと思っていました。 パラレルワールドって本当にあるものだったんですね! 「理解が早くて助かるわー。でも分かってる田中?この世界に入れたという事はあなたも超能力者になったってことよ」 へー。 「……なによ?やけに反応に乏しいわね」 え、だってそんなこといきなり言われたって実感わきませんもん。 あきなちゃんはため息をひとつつきました。 「確かに最初はそんなものか。まあ、いいわ。とりあえずこの目に毒な世界からはおさらばしときましょうか」 目を閉じときなさい、というあきなちゃんの言葉に従って目を閉じるとその瞬間に後ろ髪を引っ張られたような感覚に襲われました。 「いいわよ、田中」 あきなちゃんの声で目を開くと、そこはもとの世界でした。 人々は彫像などではなく、太陽も眩い光を放っています。 夢だった、と言われれば信じてしまいそうな体験。 「どうだった?初めての平行世界は?」 あきなちゃんの言葉で現実だったことを再確認しながら、私は答えます。 よく分からなかった、と。 「そりゃそうよね。でも事前に説明するより実際にみた方が分かりやすいでしょ?あんなとこ言葉で言い表せる場所じゃないもん」 それにはまったく同感です。 自分の中にある言葉を全てかき集めたところで、あの世界を的確に説明することなど出来ません。 独特な毒々しさ。 妖艶な浮遊感。 泥濘のような雰囲気。
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