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たしかに篤志くんとは一緒に食べる約束はしてなかったよ。 でもパンを抱えながらこっちに歩いて来てたのは気付いてた… それに気付いてないフリして出て行っちゃった俺… あのときの寂しそうな篤志くんの顔が頭からずっと離れない…… やっぱ、謝っとこかな… 『あのさー…篤志くん?ちょっとタバコでも吸いにいかな…』 まだ頭を抱えている篤志くんに近付くと、なるべく優しく、なるべく低姿勢に話す。 『いい。今仕事中だから』 俺が全部言い終わる前に思いっきり断られたっ!? しかも顔はこっちを見ることなくパソコンを見たまま…。 『そっか。ならいいや。』 …あっそ。もういいですよ。いくら俺でも怒りますよ。 そりゃ、申し訳ないことしたと思うよ。 だから反省したのに。謝ろうと思ったのに。 もういい。そんな篤志くんなんて知らない。 俺は自分のデスクに戻ると書類を大きく広げ、外の世界を遮断するようにパソコンに向き合いひたすら打ち込んでいった。
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