[メインストーリー]オレンジの雨:起

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俺に無邪気さがあった頃は、人付き合いもよく、毎日のように友達と遊んでいた。  それが、最近になって気怠さを感じる。一人でいるほうが、何かと都合が良い。余計な心労をしなくてすむだろう。実に安直な考えだ。とある小論文に、コミュニケーションと日常生活は連動していて比例する。そう述べているものがあった。  しかし、それがどうもしっくりこない。  コミュニケーションをとればとるほど、互いを利用しているようにしか見えなくなり、それを避けていたら、いつしか俺は独りになっていた。  幸いにも、俺は多趣味で、退屈な時間は独りでも生まれない。むしろ趣味に追われる生活という表現が適切だ。そういう面では、自由で充実した時間を送っているはずだった――    心のどこかに大きな寂寥感が滞っているのは、ひしひしと伝わってくる。学校が奏でる鐘の音をかきけすように、大きな溜め息をついた。  鞄を肩にかけ、校舎をでて、しばらく歩いて電車にのる。いつもなら、車窓から見える田圃道の水面が、黄金色に光り輝き、俺の心を柔和にさせる。  実に変哲のない優しい時間。この時間に、俺は淡い幸福を抱いている。 しかし、その淡い幸福すら雨はさらっていった。
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