第壱話『博文』

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授業が終わると私はすぐに隣の山尾くんに話しかけようとしたら、馨くんに捕まった。 「よし! 俊輔、行くぞ!」 有無を言わさず手首を掴まれる。 「え、あ、ちょっ、私、山尾くんに……」 私は馨くんに引きずられて教室を出て、一年生の教室の隣、二年生の教室へ連れられていかれた。 よく、左右の腕を謎のブラックマンにつかまれた宇宙人の気分てこんなんだろうな、と思った。 「たっかすぎさーーん! 連れてきましたー!」 相変わらず元気すぎる。 一学年上の教室を訪ねるときは普通、もう少し緊張感を持つものじゃないだろうか。 「ようやった、聞多!」 「たかすぎ」と呼ばれた面長で細長の目の二年生がズンズンと私たちの方にやってきた。 近くで見ると顔にあばた痕がうっすらとだが残っており、おでこを出しているが前髪前線が将来、危ぶまれる。 「……ふーん、これが伊藤か──」 「たかすぎ」さんはジロジロと私を品定めするように見ている。 その横にはニコニコ顔の馨くん。 二年生の教室には授業が終わった直後とあって、大半がこちらを好奇の目で静観している。 なんの儀式だ? アレか、アレなのか。 ○暴(マルボウ)さんとかの通過儀式か何ですか。
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