第零章 とある戯言

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「あなたはここにいるべきではありません」 「それは、どういうことだよ」 「ここは彼岸。死後の世界です。あなたの来るべきところではありません」 「そりゃあ、正論だな。でも、正論と論理力っていうのは、イコールにならないんですよ。閻魔様」  これが、映姫様と初めて邂逅した時に交わした会話。  本当に、これ以上に無いくらい、最悪な出会いだった。  請願に無慈悲を。  友愛に拒絶を。  好意に悪意を。  行為に否定を。  同情に逃亡を。  そんな、幻想郷の彼岸において、生前の罪を裁く閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥ。  誰のことも許さず許されず、認めず認められず、まるで否定というものの成れの果てのような彼女と、俺は出会った。  出会ってしまった。  存在を奪われた存在であるこの俺、春夏冬秋(あきないしゅう)は、そんな彼女と、出会ってしまった。  人生は短い。  少なくとも、『人間の』人生というものは、短いものだ。  しかし、それはこの上なく入り組んでいて、その短さからは想像もつかないくらい、複雑なものなのだと思う。  例えば、ある出来事が起こったとして、それが良いことか悪いことなのかは、にわかには判断しがたい。  あることをするべきなのか、それともしないべきなのか、それもよくわからない。  良いことをしたつもりでも、それが悪い結果を招くことなんてしばしばある。  だが、だからといって何もせず受動的になっていては、自分の人生を運命に任せることになる。
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