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「ねえ。あんた達のとこの事情なんて、知りたくもないし、知る必要もないんだろうけど――」
湯呑みを膝の上に置きながら、呆れた表情をその顔に張り付けて、少女は言う。
歳はおそらく、十六か十七くらいだろう。
正確な年齢を聞いたことが無いから、詳しいところはよくわからない。
少女は神社というこの場所で、紅白色の巫女服に身を包んでいる。
それだけを聞けば別段おかしいこともないのだが、その巫女服には腋の部分だけが無い。
さらには頭に大きなリボンを着け、巫女服自体にも少々装飾が多い。
黒髪に端正な顔立ちで、その奇抜な巫女服も驚くほどに着こなしているが、その姿は限りなく巫女らしくはない。
「毎回同じようなことばかり聞いて、同じような返答をされて、何の意味があってこんなことをしてるのかしら?」
「そんなの、仕事だからに決まってるだろ。こういうのだって、参考資料とかに使うから、案外重要なんだよ」
「ふうん。暇なのね」
「……何でそうなるんだよ」
「だって、同じことしか書いてない参考資料ばっかり作るなんて、暇でもなきゃやらないわよ」
「……お前は本当に、よくそうやって嫌なとこばっかり突けるよな。博麗」
俺がそう言うと、少女はニヤニヤと若干得意げな悪戯っぽい笑みを浮かべる。
少女の名前は、博麗霊夢。
その服装――といっても、あまりそれも普通のものではないのだが、それとここが神社だということからもわかるように彼女は巫女である。
ここ、博麗神社の由緒正しい巫女である。
しかし、彼女はどこからどう見ても今までの人生ずっと巫女をやってきたようには見えず、これならばまだ現代のアルバイトの巫女の方が巫女らしいのではないかと思ってしまうくらいだ。
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