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「それがさっき、人のことを暇人呼ばわりした奴の言えることかよ」
「細かいことは良いじゃない。そんなことを気にする方が、よっぽど面倒だわ」
「……都合良いんだな」
もう少し思うところもあったのだが、この調子でいけば永遠に終わらなくなってしまいそうだ。
それならば、踏み止まった方が良い。
というか、こいつを言いくるめることの方が、俺からすれば『面倒』なのだ。
しかし、こんな風に言ってはいるものの、俺は案外、博麗のことを信頼している。
それは、先程言ったように人望がある、ということもそうだし、頻繁に顔を合わせている、ということもあるのだろう。
でも、こいつには他にも、それだけでは言い表せ無いような何かがあるのだと思う。
「でも、よくよく考えれば、暇でおかしなことが何も無いっていうのは、良いものなのかもしれないわね」
「……意見がころころ変わるんだな。お前って」
「何よ。最初にあんたが言ったことを肯定してやってんのよ?」
「俺は何も言ってねぇよ……」
「あら、そうだったかしら? まあ、良いじゃない。雑談の内容なんて、一々覚えてるものでもないわよ」
「…………」
まあ、そうなんだけど。しかしせめて、少し前のことくらいは覚えていてほしいものだ。
「それなら、あんたは自分が暇なことをどう思ってるのよ」
「別に、暇なつもりは無いんだけどな……」
俺は言いながら、結局今日も使うことにはならなかった手帳を、羽織りの袖にしまう。
「まあ、良いんじゃねぇの? 退屈にはなるかもしれないけど、なんか平和って感じだし」
「平和ねぇ……」
呆れと、何か疑問が混ざり合ったような表情で、博麗は言う。
「でも、平和って聞くと何だか、あんまり良い感じはしないわね」
「ん? 何でだよ。平和は良いもんだろ?」
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