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「あた」
すごい、新発見。頭にホットココアくらうと「あた」って言っちゃうんだ。
「んなわけないだろ、ばーか」
とか言いながら、あたしの前まで来た。あたしはおでこをさすりながら立ち上がった。
「ゆーたん、ひどい。あたし、オンナノコ」
「ゆーたんって呼ぶな、オトコオンナ」
ささやかな抵抗。完成されたローキック。
「なにすんだよ」
「ゆーたんの心無い言葉にローキックしてあげたの」
「そういうところがオトコオンナだっ」
よーし、怒った。ヘッドロック。
「いたたたたたた」
「止まりません、勝つまでは」
「なにに? なにに勝つの!?」
「デリカシーのなさに決まってるじゃん」
そう言って、力を強める、あたし。世の中、弱肉強食。弱いものが食われていくの。力の強いやつがのし上がってく世界なのよ。
「って、誰が力任せの女だ!」
「言って、ない! 俺、言って、……ない、よ」
左手に力なく伝わる小刻みな振動。タップ。そこではっとするあたし。
「あ、ごめんごめん。つい」
何回か咳き込んで、それから何事もなかったかのように振舞い始める。滑稽だ、笑える。
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