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「笑い事じゃない。本気で落ちかけた」
それだけ言うと、タバコを取り出して口に咥えた。火を着けようとしてるところで、あたしはふと思いついたことを訊いてみる。
「なんでタバコ吸ってんの」
訊かれて、考えるような仕草をする。意外とその姿が様になってる様に見えた。なんか、ちょっとかっこいいかも。
さっきまで幼馴染のかわいらしい(ここ、重要)女の子にヘッドロックを喰らって落ちかけてたなんて、想像できない。本当、意外。そんなこと思ってたら、口を開いた。
「早死にしたい人間なの、俺」
「……前言撤回」
やっぱりこいつ、ただのかっこつけたがりだ。
「なにが」
喋ってる途中でローキックしてやった。
「あた」
なにすんだよ、とぼやく幼馴染にホットココアの空き缶を押し付ける。
「ごちそうさまでした!」
反射的に空き缶を受け取る彼を見ずに、あたしはそのままカメさんのこうらを降りていく。
「おい、どうしろって?」
困った様な声が後ろから聞こえる。
「自分で考えろ、ばかー」
振り返らずに歩きながら言うあたし。言い逃げ。
(終)
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