01.ホットココアとあたし

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「笑い事じゃない。本気で落ちかけた」 それだけ言うと、タバコを取り出して口に咥えた。火を着けようとしてるところで、あたしはふと思いついたことを訊いてみる。 「なんでタバコ吸ってんの」 訊かれて、考えるような仕草をする。意外とその姿が様になってる様に見えた。なんか、ちょっとかっこいいかも。 さっきまで幼馴染のかわいらしい(ここ、重要)女の子にヘッドロックを喰らって落ちかけてたなんて、想像できない。本当、意外。そんなこと思ってたら、口を開いた。 「早死にしたい人間なの、俺」 「……前言撤回」 やっぱりこいつ、ただのかっこつけたがりだ。 「なにが」 喋ってる途中でローキックしてやった。 「あた」 なにすんだよ、とぼやく幼馴染にホットココアの空き缶を押し付ける。 「ごちそうさまでした!」 反射的に空き缶を受け取る彼を見ずに、あたしはそのままカメさんのこうらを降りていく。 「おい、どうしろって?」 困った様な声が後ろから聞こえる。 「自分で考えろ、ばかー」 振り返らずに歩きながら言うあたし。言い逃げ。 (終)
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