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ある雪の降る日の話
「奴を絶対に逃がすな。なんとしてもここで仕留めろ!」
既に廃墟と化した町に、若いスーツ姿の男の怒号が響く。
彼の周りには、迷彩柄の服に大型のライフルを持ち、つばのある帽子を深く被った兵士が50人程が、世話しなく動いている
「しかし、我々だけで大丈夫でしょうか?既に何人もの隊員が奴に」
一人の兵士が、スーツの男に聞く。その男は、焦っているはずなのに冷静にこう答える
「奴はもう限界だ。これまでによる戦闘での体力の消耗に加え、身体も既にボロボロだろう。そして…」
男がある一点に目線を向ける。兵士も釣られてその方向に視線を向ける
「奴はそこにいる」
それは一つの小さな家だった。家と言っても、既にボロボロで、その区別すらつきにくい程である
「建物を破壊しろ。奴を生き埋めにする」
男の合図と共に、兵士達が一斉に銃を構え、同時に発砲する。家だったものは崩れ落ち、瓦礫の岡となってしまった
「奴の死体を確認しろ。しぶとい奴だ。生きているかもしれん」
そうは言いつつも男は、勝ち誇った様に、歪んだ笑みをしている。だがその時、死体を確認しにいった、兵士の悲鳴が聞こえた
「はぁ……はぁ…はぁ…」
その場の全員の視線が、瓦礫の岡へと集まる。そこには、既に気絶した兵士と、朱黒い少し長めの髪に、漆黒の瞳をした少年が、立っていた
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