『アクア・ファング』

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  それからほんのひとときの時が経ち、リリアとアイリスの二人はダランに見送られ帰路をのんびりと泳いでいた。 すっかり夕陽も沈んでしまっている刻限ではあるが、だからといって水底が暗いわけではなかった。 仄かに差し込む月光もそうだが、何より海底には照らす光があったのだ。 阿古屋貝。 ―――別名真珠貝と呼ばれるこの貝は夜、海中にて貝自体がほんのりと真珠色の光を生み出すのだ。 その仕組みは定かではないが、阿古屋貝の放つ光が凝縮し、真珠となると考えられている。 真珠となった阿古屋貝はその後、発光することはないからだ。 だが、発光こそしないものの、その後に人魚たちの住家へと変身と遂げる。 人魚と共に生み出される真珠は大変貴重なもので、それは彼女たち人魚の一生のお守りになる。 現にリリアとアイリスの二人も己の守護石である真珠を肌身離さず持っている。  
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