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「そういえば、今日はリリアと一緒ではないのか?珍しいのぅ。」
その一言で。
時が止まったかのようにアイリスは感じた。
「リリアは…来ていない…、の?」
「…爪痕を見に行った時以外、ワシはずっと此処にいたぞ、客人が絶えずして訪れるでの。…もしやリリアが居らぬのか?…こんな時に一体どこへ行ったのか…。」
ふう、ため息をついたダランに、アイリスはどこか緊張を孕んだ声音で口を開いた。
「…ダランじい、リリアがよく読んでた『人魚姫』の絵本、見せてもらいたいの…。」
「何じゃ、急に。アレならつい昨日にリリアにあげてしまったばかりじゃ。それがどうか…?」
彼の言葉でアイリスは血の気が急激に引いていくような気に陥った。
ダランもその様子に『何か』を感じ取ったらしい、そして。
「―――アイリス、その手に持っているのは、何じゃ?」
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