『人魚姫』

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  「失礼します、ダラン様。ドーン様の使いでお訪ねしました。『至急来るように』との事です。」 鎮痛で重苦しい空気を壊したのは、使者だと名乗る年若い人魚だ。 『ドーン』とは四海域で海底賢者と名高い、ダランの父親である。 ダランよりも百年程長生きで、彼よりも物知りであることから、彼の冒険好きな性格は父親譲りといえよう。 そんな賢者ドーンがダランを呼び出すのだから、『アクア・ファング』絡みであることは明白だが…余程のことである。 「あ、あれ…!?」 使いの少女もこの空気に気付いたのだろう、キョトキョトと目が泳いでいる。 どんより重い空気は、幼い少女にとってどうしようもないものだった。  
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