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「―――ふむ、親父殿が、かの。至急と、そう言ったの?」
「は、はい、そうです!」
先程の空気を微塵も感じさせないほど、ダランの口調は穏やかなものへと変わった。
そのおかげか、少女にも元気が戻り、飛び跳ねるかのような明るい声に戻っている。
けれど、一人アイリスだけは違う。
先程と変わらず黙りこくったままでいた。
「アイリス、一緒に行くかね?」
放心してしまい、虚ろな彼女を此処に一人残して行くことはしたくなかった。
だが、声無く首を振った彼女の表情は見るほどに痛々しく、そんな姿を見るのは初めてで。
ダランは心配であったけれど、少しの間そっとしておくことに決めた。
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