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いかなる話だとしても、早く終わらせて戻ってこよう―――。
「出来るだけ早く戻ってくるからの。よいかアイリス。決して事実が明らかにならぬうちに先走ってはならぬぞ?希望を捨てるでない。」
幾度も念を押して、ダランはモモと名乗った少女と一緒に洞窟を出て行った。
その心中は決して穏やかではない。
『リリア…一体何処におるのじゃ。突然居なくなりおって…アイリスにあのような顔をさせて…。ワシには何も出来ぬ、何も―――。こんな、こんな思いは…二度と御免だと、あの時にそう思ったというのに―――。』
長命であるダランは人魚たちの死を幾度と見てきた。
それは命ある者に平等に訪れる。
儚く散ってゆく命の輝きは、そして新たに命を生み出す。
だから何時の日か立ち直ることが出来る。
悲しみの後、美しい思い出へと変わるのだ。
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