『人魚姫』

23/24
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
  けれど、今回は違う。 もしそうならば、あまりに残酷ではないか。 彼女の生死は判らない。 嘆き苦しみ、それでもいつか帰って来るのではないか、そんな淡い期待を何時までも持ち続ける。 終わることのない苦しみは、決して癒えることはない。 ダランはそれを身を持って知っていた。 彼自身も苦しみを抱きながら、生きてきた。 それでも百年と少しを超えた頃には、諦めに変わった。 ふとした時に思い出す彼女の姿は、最後に見た少女のままだ。 今ダランは、込み上げる衝動を必死になって抑えていた。 ドーンの話など、『アクア・ファング』などどうだっていい。 今は彼女を、リリアの安否を確かめたい。 彼にとってそれが今一番重要なことだった。  
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!