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けれど、今回は違う。
もしそうならば、あまりに残酷ではないか。
彼女の生死は判らない。
嘆き苦しみ、それでもいつか帰って来るのではないか、そんな淡い期待を何時までも持ち続ける。
終わることのない苦しみは、決して癒えることはない。
ダランはそれを身を持って知っていた。
彼自身も苦しみを抱きながら、生きてきた。
それでも百年と少しを超えた頃には、諦めに変わった。
ふとした時に思い出す彼女の姿は、最後に見た少女のままだ。
今ダランは、込み上げる衝動を必死になって抑えていた。
ドーンの話など、『アクア・ファング』などどうだっていい。
今は彼女を、リリアの安否を確かめたい。
彼にとってそれが今一番重要なことだった。
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