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アイリスはダランがモモと洞窟を出て行った後も、その場にへたり込んだままでいた。
カチ、コチとダランが拾ってきた時計の音だけが刻の流れを明確に示している。
が、その中でアイリスだけは刻が止まったままかのようだった。
何を考えていいのか判らず、また、考える事自体を放棄していた。
何も考えたくない。
その中で出るであろう残酷な答えを、知りたくない。
そんな呆然自失した彼女を現実へと戻したのは。
コロ、と転がった一粒の真珠石。
それは彼女自身の守護石。
思うように動かない体は何をするにも億劫で、たった数センチ手を伸ばすことさえもどかしい。
ようやく拾い上げ、ぶわ、視界がぼやけた。
後から後から溢れるそれは、静かに流れるように水中に溶け込んでゆく。
アイリスは、彼女は声無く泣いていた。
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