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と、その宮の入口―――華麗な装飾が施された―――から出てくる一人の人魚がいた。
きり、と長い髪を頭の上で一つに纏めたその女性は、アイリスもよく知る人物だった。
東海の長、テルシャその人。
彼女はアイリスの姿に気付き、ギョッとした表情を浮かべた。
「あなたは、アイリス!?一体どうしたと…いえ、その前にどうしてこの場所が!?」
常に冷静沈着と名高い、彼女のそのような取り乱した姿を見た者はそう多くはないだろう。
だが、彼女の驚きももっともなものだった。
ここ、『桔梗の宮』。
実はその名すら一般には知られていないものだ。
そして更に付け加えるならば、この宮は常人には見る事すら叶わない。
世俗との関わりを禁とされた紫神。
その紫神を守るが故の防壁。
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