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海暦八二九〇年。
彼女が。
リリアが生まれてからおよそ二十年の刻が流れた。
人魚は人間のおよそ倍の年を生きるのだが、その成長の早さに変わりはない。
腰まで届く青銀の髪を頭の上でゆるくまとめ、藍色に濡れた瞳は夢見るかのように輝いている。
彼女もまた一人の美しい人魚へと成長を遂げていた。
「リリア!やっぱり此処にいたのね?」
「おはよ、アイリス。だってここが一番落ち着くんだもん。」
「もーっ。今日のお仕事終わったら一緒にクマノミの赤ちゃん見に行く約束したじゃない。」
むー、と口を軽く尖らせてリリアの隣の岩礁に腰掛けたのはアイリス。
リリアの親友で、彼女の一番の理解者である。
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