風見幽香のお花畑 前編

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その声が聞こえた途端、幽香が眼前にいた。 直撃したはずの幽香の体には案の定かすり傷しか無かった。 全く、やりにくいったらありゃしない。 さっ、と紫は隙間を開き鉄塔を前方にいる幽香目掛けて放つ。 幽香は見たことがなかった。 こんな大きな鉄の塊を。だからこそ、前方にあるものが何なのか、素手で壊せるものなのか、それとも弾幕で消し去る事が出来るのか、その一瞬の判断の躊躇いに紫は次の手を打つ。 幽香が鉄塔を薙ぎ払う。 鉄の塊が幽香の手によってへの字に折れ曲がった。 金属が凹むような重低音が響き、鉄塔の向こうの紫へ突撃する。 紫は格闘戦が弱い。 幽香はそうみていた。 紫の懐に飛び込み、鳩尾狙いのストレートを打ち込む。 ……その筈だった。 ──右から、クスリと笑う紫が見えた。 「ち──」 体を捻り、次こそ紫を狙い蹴りを入れようとする。 「遅いわ」 また、避けられた。 力も速さも私の方が上の筈なのに。 心の中で悪態をつきながら幽香は思案する。 ……なにがいけない?
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