風見幽香のお花畑 前編

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「あら、私は体術が苦手と思ってるのかしら?」 「…………」 紫がまたくすりと笑う。 「それなら正解、私は体術が苦手よ」 「は?」 弱点を話すだなんて、 裏があるとしか見えない。訝しげに紫を見る。 紫は続ける。 「でも効かないわ、貴女の攻撃を読むくらい容易いもの。二手先、三手先を読むものよ。だからこそ早い行動が出来る、貴女の上をいくスピードを掴む事が出来る」 少々喋りすぎたわね、と思いながら 紫は傘に手をかける。 次は結界を使うか、隙間か? 「ありがとう、紫」 幽香が衣服の汚れをとんとんと叩いて落としながら、落ち着いた声で話す。 「"服の汚れは落としておいた方がいいかもしれないわ"」 「どういう──」 その刹那、幽香がまた紫の懐へ潜り込む。 距離という概念すら忘れ去るほどのスピード、そして一瞬でブレーキをかける反動を利用しての、 「───!!」 幽香の右手が紫を捉えた。 その動きに合わせて紫は右半身を後ろに背け、拳を受け流した。 ──ピタッ 「!?……フェイント!!」 「遅いわ」 だん、と踏み込み、紫に膝蹴りが入る。 鈍い音がした気がした。 「ぐっ……」 これだけじゃ終わらない、終わらせない。 体を捻り、怯んだ隙に強力な右ストレートが 「続けざまに食らうと思った?」 「あら、見掛けよりタフなのね」 右手が紫の手によって止められた。 みしみし、と幽香の拳を砕かんとする力に、幽香は笑わざる得ない。 だって、楽しくなってきたから。 「マスタースパーク」 「四重結界」 右手が使えないのなら左手を使えばいい。 ……そんな考えもお見通しなのか、紫は左手で四重結界を展開し、ほぼ零距離の破壊光線を防ぎきる。 "だってそれくらい私でも予測出来たから" 「「詰めが甘いよ、紫」」 紫の背後にもう一人の幽香がにたりと笑って紫を見下ろす。 燦々と輝く両手は、まさしく先程のマスタースパーク。 「……なっ」 稲妻の轟くような爆音が辺りを支配した。 直撃した、その事実だけで充分。 最強と云われる妖怪もあれを食らえばひとたまりもない筈だ、それに四重結界の介入すら無い筈。 確かな手応えが、あった。
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