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「───"詰めが甘いわ"」
先程、幽香が放った言葉が聞こえてきた。
言葉は続ける。
「ただまあちょっと驚いたわ。忘れてた、貴女の力を。……ああもう、ドレスが破れたじゃない」
それは大妖怪八雲紫の言葉。
その声色には微かに憤怒が入り交じり、この世界を震え上がらせる。
「まあ幸い、隠すべきところは隠せたけど」
「無様ね、大人しく負けましたって言えば──」
幽香の目の前に隙間が展開されていく。
大きな黒い大穴。その先は虚空。
"それが何であるかに"気付いた時には遅かった。
「……まさか隙間で飲み込んだ!?」
轟、と爆音が響き、雷撃の槍が幽香を直撃した。
燃え盛るような痛みが幽香の思考を邪魔していく。ああもう、私の力を利用する機転だけは正解。
だってこれは私の魔力だから。
"ただ判断が遅れたから直撃した"だけ、消し去ることなんて容易い。
爆音が消え去り、燃えような痛みが引いていく。
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