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僕の毎日に、ルイの存在は当たり前になっていた。
家に帰ると「おかえりなさい」と出迎えてくれる。
洗濯も、料理も、掃除も完璧にこなしてくれて、今となってはルイがいない生活は考えられないほどだ。
最初のうち、ルイは家の中から出ることがなかった。
出ること、というより出すことがなかったというのが正しいのかな。
ルイは毎日、部屋の中で僕の帰りを待ち、僕のために働き、僕のために笑っていた。
なんてことのないことだと思っていたが、そのうち、それが可哀想に思えてきた。
そんなある日。
「外に出てみたい?」
僕はルイに問いかけた。
それはちょっとした思い付きであり、いたずらのようなものだった。
僕はルイがどんな表情を見せるのか、それだけが知りたかった。
ルイが目を丸くして、僕を見た。
「外って、どんなところでしょう?」
この一言に僕の胸がチクリと痛みを発した。
なんだろう。
きっと可哀想に思ったんだと思う。
ソファーに並んで座っていたルイの髪を、僕はそっと撫でていた。
髪を撫でられて、ルイが嬉しそうに笑った。
「明日、一緒に買物に行こうか。」
「はい!」
なんの感情もないことはわかっていた。
計算された表情なのだ。わかっている。
それでも僕は、この頃からルイの表情1つ1つに喜びを覚え始めていたんだと思う。
外に出た時、ルイはどんな顔をするだろうか。
どんな表情を見せてくれるだろう、ルイの髪を撫でながら僕は笑みを溢していた。
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