第2章 桜儚く散る時が。

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「私は生きていないから温度がないんです。」 ルイがあまりに唐突に言うから、僕は何を言いたいのかとルイの顔を見た。 「少しよろしいですか?」 そう言うと、僕の頭を自分の胸元に引き寄せる。 ルイに身を預けるようにして、僕は緊張した。 「聞こえますか?」 そう聞かれても、何のことだかすぐにはわからなかった。 でも、意識を耳に集中してみた。 聞こえてきた音が僕を切なくするなんて、これっぽちも気付かないで。 僕の耳に聞こえてきたのは、モーター音だった。 鼓動ではなく、人工的な乾いた音。 人間なら心臓のある部分に耳を当てていたが、音はそこからではなく、どこか位置の違う部分から聞こえてきている気がする。 僕はそっと頭を離す。 「アキノリさんに抱きしめられてわかりました。アキノリさんは生きていて、私は生きていない。それを感じたんです。」 「あの時?」 ルイは頷いた。 「“鼓動”というのですね。大井田さんに教えてもらいました。それが人間とアンドロイドの違いだと。」 自分の胸に手を当てて、ルイは言葉を続ける。 「私の体からは何も響きません。」 どうしてそんなことを言うのだろう。 僕にはわからなくて、だけどそのルイが可哀想に思えた。 「ルイは人間になりたい?」 僕が聞くと、手を胸から離してルイが答える。 「わかりません。」 僕は笑っていた。 そうだよな。 この子には、そんなことわからない。 ルイの手をまた握り、僕はルイを抱き寄せた。 「ルイ、ずっと僕の側にいてくれる?」 その日の夜、僕はルイを抱きしめて眠った。
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