第4章 無音の響く涙。

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ベッドを降りて、僕は充電器を運ぶとその体にさした。 99%、僕はそれが無意味だと知っていたけど残りの1%にすがった。 もちろん意味なんてなかった。 ルイはいくら待っても、目を覚まさない。 あの悲しい機械音を聞かせない。 放心したまま僕は大井田に電話していた。 電話口、大井田は僕の様子を察したのか急いで行くとだけ行って電話を切った。 十数分後。 大井田は僕の部屋でルイの寝顔と対面した。 胸に耳を当てると無音に大井田が“故障”だ、とだけ言った。 ルイの体を箱に入れ、大井田が店へと持ち帰る。 僕はその日、着替えることもしないで部屋に閉じこもり、ソファーの上で1日を過ごした。 修理をすると大井田は言ったが、僕はルイの“死”をそこに見てしまった。 温度を持たない体が、温度を持って動かなくなった“無”の姿を。
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